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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

一〇

どうせ江戸一番の性悪男だから、お嬢さんと縒を戻したか、でなきゃア新しい女でも拵えたんでしょう」

「有難う、お喜多さん、それで大方筋が解ったよ。ところで力松は?」

「あれは可哀想な男ですよ、三年越し私を口説き廻している正直者で――。今度は思い切って一緒になりましょうかしら、少し男は悪いが」

「それがいいよ、お喜多、二人は縄目の縁もあるぜ」

八五郎は横合から口を出しました。

「八さん、お前さんが縛ったのじゃないか。黙っておいでよ、お前さんと一緒になるって言やしまいし」

「へッ」

八五郎正に一言もありません。

一〇

平次はその足ですぐ植幸の親爺を訪ねました。墓場に続いた広い庭には、商売物の植木を先の見透しがきかぬほど植込んで、一方は寺、一方は低い石垣を距てて、石屋の庭から、綾吉が住んでいた長屋に通じております。

「親方、伊勢屋のお嬢さんは居なさるかい」

「これは、銭形の親分、何か御用で」

「いや、お嬢さんに用事があるには相違ないが、その前に親方の耳へ入れておきたいことがある――」

「ヘエ」

五十がらみの巌丈な植幸、何となく一徹らしいのが、相手が相手だけに、不安な心持をおさえて、ソワソワと離屋の方へ案内して行きます。