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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

一町先も見えんというので発明したのが、覗眼鏡に、呼遠筒、詳しくは、寄席へ来て、きかっし」

南玉が出て行くと

「八文も払って、誰が、手前の講釈なんぞ聞くか」

富士春の稽古部屋では、時々、小さい女が出入して、蝋燭の心を切った。

「この流行唄は、滅法気に入ったのう。俺の宗旨は、代々山王様宗だが、死んだら一つ、今の合の手で

お馬は栗毛で

金の鞍

ってんだ」

富士春が、媚びた眼と、笑いとを向けて

「お静かに」

と、いった。

「東西東西。お静かお静か。それで、その馬へ、綺麗な姐御を乗せての、馬の廻りは、万燈を立てらあ。棺桶の前では、この吉公が、ひょっとこ踊りをしながら、練り歩くんだ。手前の面が、一生に一度、晴れ立つんだ。たのむぜ」

「よし、心得た。友達のよしみに、今殺してやる。手前殺すに刃物はいらぬ、にっこり笑って眼で殺す」

「ぶるぶるっ、今の眼は、笑ったのか、泣いたのか」

稽古場から

「煩い」

と、一人が怒鳴った時、誰か表から入って来た。

「よう」

と、一人が、のびやかに迎えて、会釈をした。

「今日は、少いのう」

益満は、刀をとって、部屋の隅へ置いた。富士春が、軽く、挨拶をした。