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ちめいのけんきゅう

地名の研究

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《地名の研究(ちめいのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,308 字 · 347 頁

青空文庫

一一

アタゴという地名は京都の北部だけでなく、これから天竜を隔てた遠州の磐田郡にも有名なる阿多古がある。いずれも命名者のいる所と反対の側にあることを意味し、従って京の愛宕山なども、以前の登り口は丹波の方であったということになる。伊予で有名な越智氏の根拠地は、最初どこであったか私は知らぬが、現在もこれから土佐へかけて幾つとなくオチという地名がある。そこにまだ人の住み着かぬ前から、山の向うの人にオチと命名されていたとすると、平地がやや広いとか水があるとか、または特殊の産物を出すとか、何か特徴の話題に上るものがあったと見られるので、三河でオチという地名もやはり同種のものかと思う。

一一

我々の小地名は新旧が交錯しているために、どうかすると全部一度にできたかのごとき感を抱くものを生ずるが、生活上の必要もないものを、拵えておく人はなかったろう。何田という地名は田を開いて後に生じたことは、誰にでも想像せられるが、その田畠や村里の名に、何野・何沼という類の古名が残っているのも、やはり前にいうアテラやオチと同様に、それを開発しようというある年月日の前から、それが問題となって注意する者が多かった結果、いわゆる有名になっていたから踏襲したので、行旅や採取の生活だけならば、こうたくさんの地名は実は要らなかったのである。