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ちめいのけんきゅう

地名の研究

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《地名の研究(ちめいのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,308 字 · 347 頁

青空文庫

一六 袋

一六 袋

福良の意義上のごとしとすれば、これから類推して袋と言う地名を解説するのも、さして困難ではない。東京の周囲には何フクロと言う地名がいかにも多く、ことに池袋・沼袋・川袋などと水に縁のある袋が無数である。自分はかつて試みに武蔵の袋を数えてみたことがある。これを仮製二万分一図に当ててみるに水辺でしかも二面以上水で囲われておらぬのは稀であった。ただ山中のフクラと違ってこれは主として平地の水辺である。これをもって観ればフクラとフクロと二種の命名は、二つの語が分化してから後のことで決して同じ地名が発音を異にするようになったのではない。多分は命名の時代を異にするのであろう。関東の川は大小ともに水筋を変じている。武蔵北部から上州へかけて、古川と言う小流または廃川敷と覚しき一帯の平地がすこぶる多い。耕地の字にアイノ田と称するのも川の跡であるらしい。ゆえにかりに水辺からやや離れて何袋の地名があるとすればまたこれをもって水流の変を知ることができるのである。近代の水害にはほぼその記録がある。この記録と地図を比較すればフクロと言う地名を附ける風がいつ頃まで存していたかが判るであろう。