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ちめいのけんきゅう
地名の研究
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《地名の研究(ちめいのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,308 字 · 347 頁
六
その押問答の末は下地の中分と言って、これだけは地頭にやるから残りは手を出さぬようにしてくれということに帰着し、以前一つの開墾地であったものが二つに割かれた。東京の近くでは埼玉県南部の平地などに、その時の地名がいくらも残っている。平方領家とか指柳領家などというのがそれで、同種の地域名はまた遠州の御前崎附近、その他各地にも分布している。すなわち史家の大切にする古文書などは一通もなくても、地名が直接に過去の闘諍を語っているのである。八王子市の隣接地に一分方・二分方等の地名があったのは相続の分割であった。相州の松田附近の松田総領・松田庶子もまたそれで、親がどういう風にその財産を見たかを示すのみならず、さらに利害の牴触がいよいよ境を明らかにする必要を生じたことをも語るのである。それからまた荘園の諸役、公文とか案主とかの給与せられた田畠、鎮守・菩提寺の帰依尊信を意味する寄附地・除地・免地なども、多くは地名になってその当時の状況を窺わしめる。人がこれまでこういう史蹟に、注意を払おうとしなかっただけが悪いのである。
六
それからまた一時代を過ぎて、戦争で住民が離散し、かつて発生していたたくさんの地名が消えた。