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ちめいのけんきゅう

地名の研究

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《地名の研究(ちめいのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,308 字 · 347 頁

青空文庫

これを古くからミョウショ(名処)といっていた。土地に番号というもののなかった時代には、売買にも譲渡にも四至と土地の種目と、名処とをもって目的物を指示するの他はなかった。田植にも苅入にも名処を呼ぶのが便利だから、飛び飛びに耕地を持つ農家には、今でも決して無用でない。屋敷にもまたそれぞれの名があった。関東東北では五兵衛どん、作さんとこなどと、主人の通称をそのままに使用することもあるが、古く開けた近畿や中央部には、桂本とか西垣内とかいう風に、邸地に地名があってそれを用い、あるいはこれを屋号と混同している。

根原においては村の屋号も田の名処も、まさしく地名であった上に、時にはこれを字小字の一段と広い区域に共用したものもあるから、実状について当初命名の理由を尋ねてみようとするには、これらがはるかに有益な資料であり、従って空しく忘却してしまわぬ内に、採録しておく必要がことにあるのである。

しかもこれらの数千万の小地名は、偶然に中古以来の検注や手継証文の中に保存せられてあるもののほか、かつて蒐集の企てられたものがなかった。ところが明治八、九年の交に、地租改正の準備せらるるや、土地に番号を打つと同時にたくさんの地名を廃し、その代りにこれを収録して残そうとする事業が、内務省地理局の手で全国的に行われた。