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ちめいのけんきゅう
地名の研究
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《地名の研究(ちめいのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,308 字 · 347 頁
武蔵野といい相模野という名は、千年以上の昔の京にも知られていたが、今日我々のそう呼んでいる平地帯が、果して名の起りか否かは証拠がない。裾野を開いても鳥獣を林に追い込むごとく、武蔵野という言葉も次第次第に、農民の不用とする部分へ押しやられて、今ではよくよくのつまらぬ台地だけに、これを封じた形になったのかも知れぬのである。
とにかくに、地名の盛んにできた頃の何々野は一方が山地であり、またわずかなる高低のあることを意味したらしい。そのよい実例は大野という地名の地を見ればわかる。郡で大野というものは豊後に一つ、嫗岳山彙の東側一帯をかく名づけている。中央部の日本では越前と飛騨と今は隠れたが美濃の北部とに、おのおの一つの大野郡があって、ほとんと白山連峯の四周を取り囲んでいる。そうして今風の意味の大きな野はないのであって、これを平地に接した山の側面、麓つづきというくらいに解しなければ意味が取れないのみか、始めて嶺を越えて遠く望んだ人々の、健気な志は不明になるのである。
大野という地名に対立してさらに小野という語が古い。周防・長門の境附近では、多分まだ普通名詞としても使ってはいないかと思うほど、何々小野の地名が多い。