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ちめいのけんきゅう

地名の研究

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《地名の研究(ちめいのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,308 字 · 347 頁

青空文庫

その上に外界の不安面が広くなるので、人は近代になるまで降ってこれに就くことを好まず、依然として水の音を慕うて川上にさかのぼった。谷のますます小谷になって行くのも、やむを得なかったのである。

河内という地名は、下流の方から命名したものらしい。谷水がしばしば淀んで幾分の平地を作る場処があれば、いつかは登って来て下で溢れた人だけが住む。信州で水内といい、奥州で川内といったのも、つまりは小野のほぼ独立したものであった。あるいはまたカマチと呼ぶ地方もある。福島県白河の入りにある甲子の温泉、岩手県釜石の奥の甲子谷などは、明白にカッシといって川内と区別しているが、その地形から判ずれば元は一つであった。九州でクマ(隈)といったのもこれに当り、あるいはまた福良と称するのも小川内であって、そのいわゆる盆地の上下を括るところの急湍の地が、ツル(津留)であろうということはかつて述べた。ツルは熊野の北山川の瀞八丁のトロと同じく、滝に落ちんとしてしばらく湛えた静かなる水ではなかったかと思うが、今ではとにかくに出流などの字を宛てて、岨の下の狭い流れの、簗などに便利な場所を意味しているらしい。