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ちめいのけんきゅう
地名の研究
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《地名の研究(ちめいのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,308 字 · 347 頁
これらの例からして聯想せられるのはいわゆる鬼の田や蒔かず稲の伝説である。我々の祖先はこの国に来る時すでに稲の栽培の知識を有したはずなのに、諸国の辺土には往々に自然稲の存在を伝えている。この自然稲は多分は原種の野生ではなかった。戦後樺太を旅行した時処々の山野に燕麦が雑草となって繁茂しているのを見たが、この稲も何かの事情で立ち退いた前住民の残したものであったかも知れぬ。あるいはまた稲に酷似するただの草であったかも知れぬ。偶然の観察者は必ずしも収穫に遭遇しまたその稔りを験したのではないからである。日向高千穂峰の自然稲のことは諸種の随筆に見え、あたかも標本を取り寄せた者のあるような記事であるが『安斎随筆』などが元であるからまたこれ耳聞きであって、土佐にあるものも高寒な山嶺で、鬼ヶ城という地に接するのを見ると、一つの不思議談に他ならぬ。『扶桑略記』の裏書延長五年四月二十三日の条に、京の北山に生じたというのは、行人ことごとく取りて荷に満つれども、数日尽きずとあるからいよいよ伝説に近い。杣・猟夫などの徒の山言葉では米を草の実というと聞く。これと正反対に山中の水溜りに稲草という一種の水草を生ずる所がある。