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ちめいのけんきゅう
地名の研究
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《地名の研究(ちめいのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,308 字 · 347 頁
しかして時々の串または矢は朽廃して湮滅しやすいから特に土壇を築きその痕を明らかにし兼ねて境上の祭を営んだことは、かつて十三塚についてその一端を述べ今後もまたおいおい卑考もって大方の教えを乞おうとするところである。それゆえに塚であって矢に縁のある名を持つものは反証なき限りこれを境の標章と見て差支えなかろう。矢立杉の杉の木もまた境界と由ありと思う仔細がある。改めてこれを述べよう。
『紀伊国続風土記』によれば、牟婁郡の村々には矢倉明神という小祠が多い。たいてい社殿はなく古木または岩を祀る。著者の説にはクラは方言山の嶮峻なる処を意味す。ヤはすなわちイワの約なるべしというている。他の国々でも相模の矢倉沢を始めとし類似の地名は多い。白井光太郎氏もクラは岩のことなりと言われた。今日ではこの意味に転じたかも知れないが、クラは岩倉または倉橋などという語があってただの岩石地ではない。元は岩組すなわち岩石の重畳した者をいい、しかも天然の岩組よりも主として人為のもののことであったろう。すなわち石床やミテグラなどと同じく、今日の語で石塚に当るのであろう。従って前にいうところの遠江の初倉(大井川右岸)、または諸国の戸倉という地はまた境の塚で、矢倉はすなわち矢指塚と同じである。