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ちめいのけんきゅう
地名の研究
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《地名の研究(ちめいのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,308 字 · 347 頁
過去のある事実が湮滅に瀕して、かろうじて復原の端緒だけを保留していたのである。もう一度その命名の動機を思い出すことによって、なんらかの歴史の闡明せらるべきは必然である。だから県内の地名はどのくらい数が多くても、やはり一つ一つ片端から、その意味を尋ねて行く必要もあり、またその興味もあるわけである。
これが現在はまだなかなか容易でない仕事のように考えられている。一つの部落ないしは一つの盆地において、かりにいかほど熱心な郷土研究者がいても、よく自分の周囲の地名を理解してそれから昔あった事、すなわち祖先以来の辛苦経営の跡を知り尽すという望みはまだ持てない。たまたま独断をすれば自分すら信じあたわざることを言ってのけなければならぬことになるであろう。私などの方法は、甲乙なるべく縁の薄い遠方の同じ地名を、幾つも比べてみて自然にその意味を覚ろうとするにあるのだが、これは労が多いのみでなくその途がまだ備わっていない。たとえば明治十五年の前後には、内務省の地理局長が全国の府県に移牒して、これと同種の郡町村の字名調べをさせているのだが、この県のごとくその複本が保存してあり、時至ってこれを謄写版に付したというのは他ではまだ聴いていない。