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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
線上閱讀内田 魯庵《新編 思い出す人々(ふたばていよだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 頁
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その時、そんなものを写してドウすると訊くと、「何かの時には役に立つさ、」といった。「何でも書物は一生の中に一度役に立てばそれで沢山だ。そういう意味で学術的に貴いものなら何でも集めて置く、」と書棚の中から気象学会や地震学会の報告書を出して見せた。こういうものまでも一と通りは眼を通さなければ気が済まなかったらしい。が、権威的の学術書なら別段不思議はないが、或る時俗謡か何かの咄が出た時、書庫から『魯文珍報』や『親釜集』の合本を出して見せた。『魯文珍報』は黎明期の雑誌文学中、較や特色があるからマダシモだが、『親釜集』が保存されてるに到っては驚いてしまった。
一と頃江戸図や武鑑を集めていた事があった。本郷の永盛の店頭に軍服姿の鴎外を能く見掛けるという噂を聞いた事もある。その頃偶っと或る会で落合った時、あたかも私が手に入れた貞享の江戸図の咄をすると、そんな珍本は集めないよ、僕のは安い本ばかりだと、暗に珍本無用論を臭わした。が、その口の端から渋江抽斎の写した古い武鑑(?)が手に入ったといって歓喜と得意の色を漲らした。
鴎外が抽斎や蘭軒等の事跡を考証したのはこれらの古書校勘家と一縷の相通ずる共通の趣味があったからだろう。