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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
線上閱讀内田 魯庵《新編 思い出す人々(ふたばていよだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 頁
十二 紅葉と最後の会見――世間に伝わらざる逸事
トルストイやドストエフスキーは決して高級の知識階級者にのみ読まれるのでなくしてかえって文盲な農民間にヨリ多く愛読されてる。換言すれば人気ある作家を直ちに目して最大作家とする事は出来ないが、最大なる作家は多くの場合大抵人気がある。紅葉がトルストイやドストエフスキーのような最大作家であったか否かは別問題であるが、普遍の興味を持つ点では遥に今日の新らしい作家に勝っておる。
十二 紅葉と最後の会見――世間に伝わらざる逸事
紅葉の病気が重態であると新聞紙に伝えられてから間もなく、或日の午後、私があたかも丸善の事務室に居合わした時、紅葉さんがお見えになりましたと一店員が知らして来た。重態の病人が自身に来るはずはないから、紅葉の使いのものか、さなくば尾崎違いであろうと訝かりながら店へ出て見ると、痩せ衰えた紅葉が書棚の前で書籍を漁っていた。
余り意外だったので、狐に魅まれたような心地がして暫らく離れて立って見ていると、紅葉は偶っと顧盻いて気が付いたと見えてニッと微笑した。
「どうしたい!」と私は束々と進んで、「先アこっちへ来給え、」と応接へ案内し、卓を央に相対いとなるや、「大変悪いように聞いたが、能く出て来られたネ!」