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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
線上閱讀内田 魯庵《新編 思い出す人々(ふたばていよだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 頁
五 美妙と紅葉との比較
のは誠に気の毒であった。
以上は美妙が文壇に失墜した所以の重なる理由である。それ以外に幾多の遠因も近因もあろうが、畢竟するに最後が極めて悲惨であったのは自ら求めて世間や友人の同情を薄くしたためである。文壇が美妙に背いたのではなくて美妙が文壇に背いたのである。
だが、ドウしてこんな風に偏小狭隘求めて世間に遠ざかるようになったかというと、美妙をこんなに偏屈に孤立を好むようにならしめた所以の美妙の生立ちの家庭の事情に遡らねばならないが、美妙と交際の極めて浅かった私はこれを究むるだけの材料に不足しておる。が、美妙の生立ちには一貫した一条の悲劇的径路があったように聞いている。
五 美妙と紅葉との比較
美妙と紅葉とは種々の点で違っていた。第一に雅号である。美妙斎美妙と名乗った理由は知らぬが、別段説明を聞かないでも解るほど露骨であって詩人の奥床しさを欠いておる。小説家よりは曲芸師染みて寄席のビラに書かれそうだ。紅葉山人というは青年時代に芝に住っていた因みから紅葉山の人という意味で命じたので、格別捻くらない処に洒落の風が現われている。第二に筆跡である。美妙斎の筆蹟は定家ようの極めて美くしい書風であったが、何となく芸人披露の名弘めの散らしの板下然として気品に欠けていた。