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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
線上閱讀内田 魯庵《新編 思い出す人々(ふたばていよだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 頁
五
徳を累するどころか、この家庭の破綻を処理した沼南の善後策は恐らく沼南の一生を通ずる美徳の最高発現であったろう。
五
沼南のインコ夫人の極彩色は番町界隈や基督教界で誰知らぬものはなかった。羽子板の押絵が抜け出したようで余り目に立ち過ぎたので、鈍色を女徳の看板とする教徒の間には顰蹙するものもあった。欧化気分がマダ残っていたとはいえ、沼南がこの極彩色の夫人と衆人環視の中でさえも綢繆纏綿するのを苦笑して窃かに沼南の名誉のため危むものもあった。果然、沼南が外遊の途に上ってマダ半年と経たない中に余り面白くない噂がポツポツ聞えて来た。アアいう人目に着く粧いの婦人に対してはとかくにあらぬ評判をしたがるもんだから、我々は沼南夫人に顰蹙しながらも余りに耳を傾けなかった。が、沼南の帰朝が近くなるに従って次第に風評が露骨になって、二、三の新聞の三面に臭わされるようになった。
その頃沼南の玄関にYという書生がいた。文学志望で夙くから私の家に出入していた。沼南が外遊してからは書生の雑用が閑になったからといって、殊にシゲシゲと遊びに来た。写字をしたり口授を筆記したりして私の仕事の手伝いをしていた。