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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
線上閱讀内田 魯庵《新編 思い出す人々(ふたばていよだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 頁
いわゆる女にしても見ま欲しいという目眩しいような美貌で、まるで国貞の田舎源氏の画が抜け出したようであった。難をいったら余り美くし過ぎて、丹次郎というニヤケた気味合があった。最う少し色が浅黒いとか口が大き過ぎるとかいう欠点があったらかえって宜かったろうと思う。
眉山が予備門(今の高等学校)へ通う時分、その頃は制服がなかったので思い思いであったが、眉山は何時でも黄八丈の袂の長い羽織を着ていた。この媚かしい羽織が女のような眉山の顔と能く釣合って、影では蔭間のようだと悪語をいうものもあったが、男の眼にも恍惚とするほど美くしかった。通学の道筋に当る町の若い女は眉山の往帰りを楽みにして、目牽き袖引き目送って人知れず焦れていたものも少なくなかったという評判だった。
殊に眉山の艶容媚態――というと女の形容になるが、その頃の眉山を彷彿するには女の形容を用ゆるが適していた――を著るしく引立たしたのは春亭九華であった。春亭九華などというと如何にも柔しげだが、九華は縦も横も大々した巨漢であった。この九華がクラスの中でも殊に眉山と大の仲善しであって、学校の往復は本より何処にでも二人は一緒に連立っていた。