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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

線上閱讀内田 魯庵《新編 思い出す人々(ふたばていよだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 頁

青空文庫

と眉山は一生忠実に仕えた老婢に向って、「オイ阿婆、何処かで急須と茶碗を借りて来な、」と平気なもんだった。

その頃は最う眉山も執達吏に馴れ切っていた。「身体に附いてるものは押える事が出来ないッてから、今度はピカピカ光る指環を三つも四つも穿めて見せびらかしてやろう、」なぞと平気な顔をして笑っていた。が、眉山はかなり長い間債務の交渉に忙がしかったが、ついぞ服装を崩さずにリュウとしていた。何時でも座敷を奇麗に片附け、床の間には幅を掛け花を活け、庭には植木棚を作って盆栽の二、三十鉢も列べて置くという風で、儀式張った席へ臨む時は、質屋で着更えて行くと本人はいっていたが、左に右く黒紋付の対に仙台平という拵えだったから、岡目には借金に苦められてるとは少しも見えなかった。借金取にも最う慣れ切っていて、貧乏咄をするにも極めて余裕があって、それほど窮迫しているとは誰も思わなかった。

眉山は酒の上が余り評判が好くなかった。始終眼が充血していて、頭の具合が悪いと口癖にいっていたのもやはり酒のためらしかった。が、この酒は元来好きでもあったろうが一つは生活の不愉快を忘れたさに益々酒癖を昂じさせたのであろう。