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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

線上閱讀内田 魯庵《新編 思い出す人々(ふたばていよだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 頁

青空文庫

乙羽もまた紅葉の世話になった男である。が、乙羽もまた硯友社外の誰とでも交際したのが紅葉の気に入らないで折々忌味をいわれた。が、乙羽は三唖と違って如才ない利口者だったから、三唖のように紅葉の機嫌を損じるような事は做なかったし、背後に資本家の博文館を背負っていたから紅葉の方でも遠慮していた。それでも博文館に入ってから一年ほど経った或時、近頃は忙がしくて紅葉さんの許ばかりへ行ってられないで諸方へ顔を出すので、紅葉さんの御機嫌が悪くて困ると愚痴を覆した事があった。

こんな塩梅に人の世話もしたが十分感謝して自分を立てないと満足しない親分肌通有の欠点をも持っていた。それでも後進生や門下生が帰服していたのは紅葉が文壇に勢力があったばかりでなく、尋常ならぬ熱情と親切とを持っていたからであった。紅葉は人に叱言をいう時は涙をボロボロ覆して、これほど俺のいうのが解らないかと泣く事が珍らしくなかったそうだ。この熱情とこの親切とがあってあれだけの門下を養成し、多数の硯友社員を一身同体の如くに率いて活動する事が出来たのであろう。紅葉は確に人に長たる親分的性格を有っていた。