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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
線上閱讀内田 魯庵《新編 思い出す人々(ふたばていよだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 頁
とでも冥土から端書が来る処だった。
緑雨の眼と唇辺に泛べる“Sneer”の表情は天下一品であった。能く見ると余り好い男振ではなかったが、この“Sneer”が髯のない細面に漲ると俄に活き活きと引立って来て、人に由ては小憎らしくも思い、気障にも見えたろうが、緑雨の千両は実にこの“Sneer”であった。ドチラかというと寡言の方で、眼と唇辺に冷やかな微笑を寄せつつ黙して人の饒舌を聞き、時々低い沈着いた透徹るような声でプツリと止めを刺すような警句を吐いてはニヤリと笑った。
緑雨の随筆、例えば『おぼえ帳』というようなものを見ると、警句の連発に一々感服するに遑あらずだが、緑雨と話していると、こういう警句が得意の“Sneer”と共にしばしば突発した。我々鈍漢が千言万言列べても要領を尽せない事を緑雨はただ一言で窮処に命中するような警句を吐いた。警句は天才の最も得意とする武器であって、オスカー・ワイルドもメーターランクも人気の半ばは警句の力である。蘇峰も漱石も芥川龍之介も頗る巧妙な警句の製造家である。が、緑雨のスッキリした骨と皮の身体つき、ギロリとした眼つき、絶間ない唇辺の薄笑い、惣てが警句に調和していた。