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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁
それと共に女の姿も一歩一歩と近づきました。――と思われた刹那! 気がついたに違いない、俄かに女が急ぎ出したのです。
だが京から三河、三河からこの身延路へと退屈男の健脚は、今はもうスジ金入りでした。
「もし、お女中!」
すいすいと追いついて肩を並べると、ギロリ、目を光らしながら先ずその面を見すくめました。然るに、これがどうもよろしくない。
「ま!……やはりお山へ!」
追いつかれたらもう仕方がないと思ったものか、馴れがましく言いながら嫣然としてふり向けたその顔は、侮り難い美しさなのです。加うるに容易ならぬ風情がある。匂やかに、恥じらわしげに、ぞっと初い初いしさが泌み入るような風情があるのです。
「ほほうのう」
「は?……」
「いやなに、何でもない。おひとりで御参詣かな」
「あい……。殿様もやはりおひとりで?」
「左様じゃ。そなたもひとり身共もひとり――あの夜のお籠りがついした縁で、といううれしい唄もある位じゃ。どうじゃな、そなたとて二人して、ふた夜三夜しっぽりと参籠致しますかな」
「いいえ、そんなこと、――わたしあの、知りませぬ」
くねりと初い初いしげに身をくねらして、パッと首筋迄も赤らめたあたり、三十年増が化けたものなら正に満点。