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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

同時に莞爾としながら言った主水之介の声もわるくない。

「まずざッとこんなものじゃ。五寸の的などに十本射通すがものはなかろうぞ。あるじ、的替えい」

「はっ」

寸を縮めてつけ替えたのは三寸。

エイ、ヒョウ、サッと射て放たれた矢は、同しくプツリとまた黒星でした。

「御見事、さすがにござります!」

「何の、他愛もない。今一度寸を縮めい」

「はっ。――的は二寸――」

サラリ、土壇近くの焔がゆらめいたかと見るまに、同じくプツリ黒星!

「天晴れにござります」

「まだ早い。事のついでじゃ。一条流秘芸の重ね箭を見せてとらそうぞ。的替えい」

英膳、鞠躬如としてつけ替えたのは一寸角の金的です。

ぐッと丹田に心気をこめて、狙い定まったか、射て放たれた矢は同しくプツリ、返す弓弦に二ノ矢をついだかと見るまに、今的中したその一ノ矢の矢筈の芯に、ヒョウと射て放たれた次のその矢が、ジャリジャリと音立てて突きささりました。

「お見事! お見事! 英膳、言葉もござりませぬ」

「左様のう。先ず今のこの重ね矢位ならば賞められてもよかろうぞ」

莞爾としながら静かにふりむくと、自若として揶揄しつつ言ったことでした。