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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

しごきで結わえたままの身体を新筵の上に寝かされて、犇と左右から寄り添いながら、男女共にその顔は、何の苦しみもなく少しのもがいたあとも見せず、水死の苦痛はどこにも見えないような安らかさでした。

「はてのう。ちと不審じゃのう京弥」

「何でござります」

「断末魔の苦悶はおろか、水を呑んであがいたような色もない。いぶかしいぞ。灯りをみせい」

さしつけた灯りと共に、じいッと見眺めると、ふたりとも首筋に変な痕がある。――締めた痕です! 紛れもなく細紐のようなもので締めたらしい、血の黒ずんだ痕が見えるのです。

「ウフフ。わはは」

途端でした。爆発するような哄笑が退屈男の口にのぼりました。

「ウッフフフ。わッははは。いや、面白いぞ。面白いぞ。水死人に絞め殺した紐痕が見ゆるとは、愈々怪談ものじゃ。どうやら話が本筋に這入ったわい。――亭主! 亭主!」

「はッ。六兵衛はここに控えてござります」

「いやそちでない。遊女屋の亭主じゃ。誰袖の抱え主が参り合わせておると申したが、いずれじゃ」

「へえへえ。三ツ屋の亭主ならば手前でござります。いつもながら御健勝に渡らせられまして、廓内の者一統悦ばしき儀にござります。