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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

「では、お約束の趣向に取りかかりますゆえ、少々お待ち下さりませ。――おい。誰か、若い者、若い者は誰かおりませぬか」

番頭を呼び招くと団十郎は、何の趣向にとりかかろうというのか、小声でそっと命じました。

「さき程ちょっと耳打ちしておいたから来て下さる筈だ。上方の親方を呼んで来な」

「いいえ、お使いには及びませぬ。参りました」

まるで声は女です。恥ずかしそうに身をくねらせながら、鬘下地の艶な姿を見せたのは、上方下りの立女形上村吉三郎でした。

「お初に……」

「おう。主水之介じゃ。世の中がちと退屈でのう。楽屋トンビをしておるのよ。舞台は言うがまでもないが、そうしておる姿もなかなかあでやかじゃのう」

「御前が、御笑談ばっかり……。江戸の親方さん、では、身支度に――」

「ああ、急いでね。早乙女のお殿様のお目の前で女に化ってお見せ申すのも一興だから、一ツ腕によりをかけて頼みますよ」

「ようます」

吉三郎の姿は、みるみるうちに女と変りました。しかも只の女ではない。持ち役そのままの傾城姿、奥州に早変りしたのです。いや、その声は言うもさらなり、言葉までがすっかり吉原育ちの傾城言葉に変りました。