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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

「ま! 花魁も……」

「傷の御前も……」

婢たちは、目が高いと言っていいか、低いと言っていいか、主水之介をそれと看破って成田屋、おいらん、二人が取巻きの川涼みと思ったらしく、忽ちそこへ見る目もさらに涼しい幾品かの酒肴を運びました。

「おいらん、一献汲むか」

「あい。お酌いたしんす……」

「のう、成田屋」

「はッ」

「は、とは返事がきびしいぞ。市川流の返事は舞台だけの売り物じゃ。もそっと二枚目の返事をせんと、奥州に振られるぞ。さきほどのおししは、十万石位のおししだったのう」

「あんなことを! 憎らしい御前ざます。覚えておいでなんし。そのようなてんごうお言いなんすなら――」

くねりと身をくねらせて吉三郎の奥州が、やさしく主水之介を睨めながら、チクリと膝のあたりをつねりました。――こぼるるばかりの仇ッぽさ、退屈男上機嫌です。

「痛い! 痛い! おししが十万石なら、この痛さは百万石じゃ。――のう、成田屋。昼間の喧嘩も女がもとらしいが、そち、あの女を見たか」

「いいえ、御本尊にはお目にかかりませぬが、番頭どもがきき出して参った話しによると、曲輪上りだそうでござります。玄人でいた頃、あの二人が張り合っていたそうでござりましてな、売ったお武家さまは、腰本治右衛門とかおっしゃるお歴々、売られたお方は湯島とやらの町絵師とかききました。