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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

「京弥さま! しっかり!」

「菊路さま! おぬかり遊ばすな!」

見事です! ひらり、ひらり、草原の嵐に舞う胡蝶のように、京弥の小姓姿と、菊路の振袖姿が、おしよせた一陣の中をかいくぐり、かいくぐり、右へ左へ、動いたかと思うと、

「あ!」

「うーん!」

バタリ、また一人。

バタリ、また一人。――まこと早乙女主水之介薫陶の揚心流当身のものすさまじさ! 夜目にも玉をあざむく二人の若人の腕ののびるところ、鬼をもひしぎそうな大男の浪人姿がつぎつぎとたおれて、うしろからバラバラと、裏崩れ。たまりかねたか、

「めあては早乙女だッ。おれにつづけッ」

とびかかった腰本治右衛門――。

「ばか者めッ」

そのまま、退屈男の前へ金縛りにあったように立ちすくんでしまいました。

おそろしい目です。射通すようにおそろしい主水之介の烱々たる眼光です。

「………」

じりッと、そのおそろしい目が一足動いた――。

「た、たすけてくれッ」

悲鳴をあげて腰本治右衛門、お濠端の一団の中へ逃げこもうとした途端、奇ッ怪です。サッと、一本の槍の石突きが、当の一団の中から流れ出たかと思うと、物の見事に治右衛門のみぞおちへ、――治右衛門の身体は、投げ出されたように砂利の上へ叩きつけられました。