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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

いや、曲乗り致したか。見事じゃ、見事じゃ、ほめとらするぞ」

しきりに興を催しているとき、再び耳を打ったのは、街道の向うから近づいて来た蹄の音です。てっきり、それも同じような若者であろうと察して、ひょいとふり返って見眺めると、だが、馬上せわしく駈け近づいて来たのは、どこかの藩士らしい旅侍でした。しかも二人、その上何の急使かその二騎が、また変に急いでいるのです。急いで一散に街道を東へ轡を並べながら、丁度そこの洗い馬の岸辺近くまでさしかかって来た刹那――、全く不意でした。それまで背の上の主人共々、心地よげに水を浴びていた黒鹿毛が、突然高くふた声三声嘶くと、背に若者を乗せたまま、抑え切れぬ感興をでも覚えたかのように、さッと岸辺に躍り上がりながら、今し街道を東へ駈けぬけようとしている旅の二騎目ざして、まっしぐらに挑みかかりました。

「黒! 黒! どうしたんだ! 静かにせんか! 静かにせんか! 何をするのじゃ! 何をするのじゃ!」

必死に手綱引きしめて声の限り制したが、事の勃発する時というものは仕方がない。さながら狂馬のごとくに鬣逆立てながら、嘶きつづけて挑みかかったと見るまに、疾走中の早馬は、当然のごとく打ちおどろいて、さッと棒立ちになりました。