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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁
揃えて捧持しながら、薄茶煎茶その時々の御上意があり次第、即座に進め参らすがその役目、そうしてうしろのお小姓は、飾り仕立てのお佩刀を、これまた恭しく捧持して神妙に畏まり、その物々しさ大仰さ、物におどろかない退屈男も、思わず目をそば立てました。
「さすがは権現様お血筋、なんとはのう御気高くましまして、早乙女主水之介、知らず知らずに頭の下がる思いにござります」
言わぬばかりに膝こごめながら、御前の近くに伺候しようとしたとき、
「ホウイ、ホイ」
と、槍持ち奴共の声も景気よく吉田の宿の方から街道目ざして練って来たのは、どこかの藩の大名行列でした。無論、退屈男が待ちうけている薩州島津の行列ではない。それとは反対に無事江戸参覲を果して、久方ぶりでのお国詰を急いでいるらしい藩侯に違いないが、折も折に願うてもない道中行列が近づいて来たのはお誂え向きです。音に聞えたぐずり御免のあのお墨付が、どの位の威権を持っているか、まのあたりその御威力を拝見するには好機会と、急いで退屈男は、その道わきに姿をひそませながら、まなこを瞠って窺いました。
と――案の定、それまで供揃いもいかめしく、練りに練ってやって来た行列先のお徒士頭らしい一人が、早くも源七郎君の釣り姿をみとめて、慌てふためきながら君公の乗物近くへ駈け戻っていったかと見ると、ぴたり