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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

投げい! 投げい! もそッと投げて見い!」

泰然自若、雨と霰にそそぎかかる石のつぶてを右に躱し左に躱して、顔色一つ変えずに大きく笑ったままなのだから敵わないのです。しかもその身の躱し方のあざやかさ!

「わッははは。当らぬぞ。当らぬぞ。――左様々々。今のはやや法に敵った投げ方じゃ。いや、うまい。うまい。その意気じゃ。その意気じゃ。もッと投げい! もそッと必死になって投げてみい」

笑いつつ、パッと躱してはさッと躱し、掴んで投げる小石はこれをバラバラと編笠の楯で受け止め、そうして悠揚自若、只もう見事の二字に尽きるすばらしさでした。いや、これこそはまさしく技の冴え、肝の太さ、胆の冴えの目に見えぬ威圧に違いないのです。投げては襲い、襲ってはまた投げつけて、必死に挑みつづけていたが、泰然自若としながら顔色一つ変えぬ主水之介のすさまじい胆力と水際立った技の冴えに、いずれも農民達は知らず知らずに恐怖と威圧を覚えうけたものか、誰から先にとなくじりじりとあとに引いて、石つぶての襲撃もどこから先に止まったともなく止まりました。いや、農民達ばかりではない。ことごとく舌を巻いたらしいのはあの老神官です。