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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁
「ウフフ。うまいぞ。うまいぞ」
きいて戸の外の退屈男は小さく呟きました。しかし、穏かでないのは京弥です。きき堪えられないように身悶えながら色めき立ったのを、
「大事ない、大事ない。あれが手管ぞよ。手管ぞよ。今暫くじゃ、辛抱せい」
小声で叱りながら、なおじッと聞耳立てました。それとも知らずに十郎次は、菊路の巧みな誘いの一手に汚情を釣り出されたとみえて、ますます色好みらしい面目をさらけ出しました。
「聟探しの日光詣でとはきくだに憎い旅よ喃。もしも目をかけてとらす男があったら何とする」
「ござりましたら――」
「ござりましたら、何とするのじゃ」
「そのようなお方がござりましたら、きっと日光様が御授け下さりましたお方に相違ござりませぬゆえ、いいえ、あの、わたくしもうそのようなこと申上げるのは恥ずかしゅうござります」
きくや、実に十郎次の行動は直接なのです。直接以上に露骨でした。にじり寄ってむんずとその手をでも取ったらしい気勢がきこえると共に、あからさまな言葉がはっきりときこえました。
「可愛いことを申す奴よ喃。身共がなって進ぜよう。誰彼と申さずに、この拙者が聟になって進ぜるがいやか」