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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁

青空文庫

……へ入った。以前は、そこから、だらだらと田町へ下りられたからそれだけの風情もあった、ただそのままの、凡常な、ついとおりの往来の、とある曲り角になったのでは、合力稲荷の幟のかげも、霜げた、間のぬけた感じである。――十年まえ「続末枯」を書いたとき、わたしは、狂言廻しの真葛庵五秋という俳諧師に、わざわざこのあたりをあるかした。――と、ふとそれをわたしはおもい出した。

「……どうせここまで来たものだ、出たついでに、公園の近所まで伸して、宮戸座のそばに三味線屋をしている甥のところでもたずねようと、五秋は考えた。

合力稲荷のところから、田町へ、土手を下りた。店を閉めた上総屋のまえを通り、如燕の看板の出ている岩勢亭の前をとおって、鬘屋のところから右へ切れたところで、五秋は、小梅の宗匠のところへ来る吉原の引手茶屋の主人の紅蓼に逢った。

『五秋さん、どちらへ』

『一寸、いま、今戸まで』帽子をとりながら五秋はいった。

『今戸は鈴むらさんですか』

『そうでございます。――ところが、生憎留守で』五秋はいった。『どちらのおかえりです』

『今日は古笠庵の芭蕉でしてね』

『ああ古笠庵の――』