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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
銀行もなければ、会社もなければ、役所もなければ、病院もありません。お寺もその居廻りにはありません。去年、市立の大きな学校が二丁目の中ほどに出来たので、建具屋と肴屋の間に学校用品を売る見世が二三軒出来ました。学校の表の煉瓦塀と植込んだ桐の木が見えるようになってから、横町の気合は幾分違ってきましたが、でも、まだ、質屋の土蔵の壁がやっぱり目につきます。
前に書くのを忘れましたが、三丁目の大通りの角につるやという大きな際物屋があります。春、凧と羽子板がすむと、すぐお雛さまにかかり、それがすむと五月人形にかかります。夏の盆提燈や廻り燈籠がすむと、すぐ御会式の造花にかかります。と、また、霜月になって、凧と羽子板の仕度にかかります。そつのない商売です。――こうしてみると『一年』という月日が目に見えて早く立ちます。
わたしは、溯って、古いことをいうつもりはありません。が、いまいった小川だの真間だのという代用学校、五六年まえまでは、かなりに繁昌していました。外にも、近所に、青雲というのと、野間というのとがありましたが、やっぱりそれぞれに繁昌していました。――しかし小川というと、なかでも一番古く、一番面倒がいいというので、どこよりも流行りました。