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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁

青空文庫

珍世界のとなり、今の富士館のところに、加藤鬼月一座の改良剣舞がかかっていた。

改良剣舞といっても、必ずしも、うしろ鉢巻の、袴の股立を高くとり、鼻のあたまにばかり濃く白粉をつけた男たちの、月琴によって、日清談判をばかり破裂させた訳ではない。それはほんの附合せにすぎず、じつは、短銃強盗清水定吉だの、服部中尉(だったか大尉)だったかの太沽砲台占領だのの芝居をやるのだった。あるときは、あの川上の演った「武士的教育」をもじったようなものをさえ演ったこともあった。

それは立廻りと七五の台詞とで出来上っている初期の書生芝居だった。短銃と、合口と、捕縄と、肉襦袢と、白い腹巻とが、そこで演るすべての芝居の要素だった。

学校で(わたしの学校は浅草学校だった)わたしの机のそばに公園の写真屋の息子がいた。これが加藤鬼月を大の贔屓だった。機会さえあればそこに入浸っていた。わたしは、かれによって、「花のさかりの向島、人も散っちゃあヒッソリと、鳥もねぐらの枕橋、ズドンと一発短銃の、音はたしかに辻強盗」という官員五郎蔵の台詞を教えられた。

この写真屋の息子、姓は鴨下、名は中雄、晁湖と号して、今では画を描いている。