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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
勿論そのまえにはすでに出来上ったものとおぼしい鋸が、ほんのわずか、しるしばかりに並んでいます。――いかにもそれが「深川」らしい、不動さまの境内らしい、そうしてそこに梅雨の来るまえらしい、季節的な鬱屈をわれわれに感じさせました。
永井荷風先生に「深川の唄」というお作があります。明治四十二年の二月の「趣味」……そのころあった「趣味」という雑誌に出たもので、四十二年といえば、先生まだ「牡丹の客」も「歓楽」も「すみだ川」も書いておいでになりません。西洋から帰ったばかりの主人公がある偶然の機会に昔馴染の深川をたずね、不動さまの境内に、おぼつかなく三味線を抱えて「秋の夜」をうたう盲目のものもらいをみ出して、傾く冬の日かげの中にうつし身のいい知れぬ哀しみを知るという筋の、「夕日が左手の梅林から流れて盲人の横顔を照す。しやがんだ哀れな影が如何にも薄く、後の石垣にうつる。石垣に築いた石の一片毎には、奉納者の名前が赤い字で彫りつけてある。芸者、芸人、鳶者、芝居の出方、ばくち打、皆近世に関係のない名ばかりである。」だの「自分はいつまでもいつまでも、暮行くこの深川の夕日を浴び、迷信の霊境、内陣の石垣の下に佇んで、ここにかうして歌沢の端唄を聴いていたいと思つた。