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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
さすがに円玉は泰然自若だったが、扇橋のほうは、ついにその世界の空気になじめず、終始、キョト、キョト手のひらで額をこするばかりだった。あかるいシャンデリヤの下、若い、けばけばしい女たちの群の中に、ぼくは、明治の初年を身につけた、老いたる芸人の二つの型をゆくりなくみ出したわけだった。
浅倉屋の“このごろ店舗の一部を割いて新刊書の小売をはじめた”ということは、このときすでに、この老舗に衰亡のかけがきざしていたのではあるまいか?
かくて、しかし、わがふるさとの町々のそうした変貌についてしるしたあと、“が、忘れ難い。……でも、矢っ張、わたしにはその町々がなつかしい。”と、三十九歳のぼくはいった。そして、“何故だろう?”と、ぼくは、自分で自分に問い、自分で自分に、つぎのようにこたえた。
“そこには、仕出屋の吉見屋あって、いまだに「本願寺御用」の看板をかけている。薬種屋の赫然堂あって、いまなお、あたまの禿げた主人が家伝の薬をねっている。餅屋の太田屋あって、むかしながらのふとった内儀さんが、いつもタスキがけの、がせいな恰好をみせている。――宿屋のふじや、やなぎや、鳥屋の鳥長、すしやの宝来、うなぎやの川松、瓦煎餅の亀井堂、軽焼屋のむさしや。