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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

少し吐いたとみえて、嗽い茶碗や濡手拭が丸盆の上にあった。

昼少し過ぎに、マダムの容態に何か変化が来たのか、昨夜呼ばれた連中の一人である栗栖という医学士が来ていた。栗栖は銀子の仕込み時代から何となし可愛がってくれた男で、病院へ薬を取りに行ったりすると、薬局へ行って早く作らせてくれたり、病院のなかを見せてくれたりした。そのころ吉川鎌子と運転手の恋愛事件が、世間にセンセイションを捲き起こしていたが、千葉と本千葉との間で轢死を図り、それがこの病院に収容されているのだった。

「この病室にいるんだよ。」

などと病室の前を足早に通りすぎたこともあった。

マダムお気に入りの銀子が、手洗いの湯やタオルを盆に載せて持って行くと、ちょうど診察が済んだあとで、一両日中に入院でもするような話であった。

「どうも昨夜は失敬した。途中まで送ってあげようと思ったんだけれど、いつの間に帰ったのか……今朝何ともないかい。」

銀子に言うのだった。銀子もこの若い医者が好きなので、前へ出ると顔が少し紅くなったりするのだったが、その理由は解らず、何となし兄さんのような感じがするのだった。昨夜も若い同僚たちに揶揄われ、酒を強いられ、わざとがぶがぶ呑んで逃げて来たのだった。