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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

うとうととしたと思うと、路次に跫音が聞こえ、呼び鈴の釦を押すらしかったが、戸を叩く音もしたと思うと、おいおいとそっと呼ぶ声もしていた。隣に親たちがいるので、彼もそれ以上戸を叩かず、すごすご帰って行くのだったが、いつもそれでは済まず、木槿の咲いている生垣を乗りこえ、庭へおりて縁の板戸を叩くこともあった。

「お前がそれほどいやなものなら、お母さんも無理に我慢しろとは言わない、きっぱり話をつけたらいいじゃないか。」

ある晩も座敷から酔って帰った銀子が寝てから、磯貝が割れるほど戸を叩き、母が聞きかね飛び出して来て、銀子に戸を開けさせ上にあげたが、白々明けるころまでごたごたしていたので、彼女は磯貝の帰るのを待って、銀子に言うのだった。銀子は目を泣き腫らしていた。

「だから私きっぱり断わったのよ。こんな処にいるもんかと思ったから。そしたら、あの男も今まで拵えてやったものは、みんな返せと言っていたわ。」

「ああ、みんな返すがいいとも。そんなものに未練残して、不具にでもされたんじゃ、取返しがつかない。」

気の早い銀子の父親が、話がきまるとすぐ東京へ飛び出して行き、向島の請地にまだ壁も乾かない新建ちの棟割を見つけて契約し、その日のうちに荷造りをしてトラックで運び出してしまい、千葉を引き払った銀子たちがそこへ落ち着いたのは、夜