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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁
値で買い取ったのであった。日々に地が均され、瓦礫が掘り出され、隅の方に国旗の棹が建てられ、樹木の蔭も深くなって来た。ここで幾度か出征兵士の壮行会が催され、英魂が迎えられ、焼夷弾の処置が練習され、防火の訓練が行なわれた。
夜そこに入って、樹立の間から前面の屋並みを見ると、電燈の明るい二階座敷や、障子の陰に見える客や芸者の影、箱をかついで通る箱丁、小刻みに歩いて行く女たちの姿などが、芝居の舞台や書割のようでもあれば、花道のようでもあった。
狭苦しい銀子の家も、二階の見晴らしがよくなり、雨のふる春の日などは緑の髪に似た柳が煙り、残りの浅黄桜が、行く春の哀愁を唆るのであった。この家も土地建ち初まりからのもので、坪数にしたら十三四坪のもので、古くなるにつれていろいろの荷物が殖え、押入れも天井の棚も、ぎっしり詰まっていた。均平の机も箪笥とけんどんの間へ押しこまれ、本箱も縁側で着物の入っている幾つかの茶箱や、行李のなかに押しこまれ、鼓や太鼓がその上に置かれたりした。もちろん彼は大分前から机の必要がなくなっていた。古い友人に頼まれて、一ト夏漢文の校正をした時以来、ペンを手にすることもまれであった。