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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁
葉子はちょっと擽ったい顔をして「ちょっと逢って下さる?」と云うので、手を洗って上がろうとすると、秋本がもう部屋へ入って来た。秋本は貴族的な立派な風貌の持主で、葉子の郷里の人が大抵そうであるように、骨格に均齊があり手足が若い杉のようにすらりとしていた。紫檀の卓のまわりに二人は向き合って坐ったが、互いに探り合うような目をして、簡単な言葉を交したきりであった。庸三は葉子の旅宿で、○や丶のついたその歌集の草稿を見せられたこともあったし、土を讃美した彼の著述をも読んだのであったが、葉子が結婚の約束をしたのが、この男であるような、ないような感じで、しかし何か優越感に似たものをもって彼と対峙していたのであったが、しばらくすると秋本は葉子にそこまで送られて帰って行った。ずっと後になって、秋本はそのうち郷里の財産を整理すると、子供の分だけを適度に残して、そっくりそれを東京へ持って来て、郊外に土地を買い、農園の経営を仕事とすると同時にそこに葉子と楽しい愛の巣を営もうというので、そうなると葉子にもすっかり文壇との交遊を絶ってもらいたいというのが、かねての彼の申出でらしかったが、葉子は文壇に乗り出す手段としてこそ、そうしたペトロンも必要だったが、そこまで附いて行けるかどうかは彼女自身にも解っていなかった。