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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁
その瞬間庸三は何か現世離れのした感じで、海に戯れている彼女の姿が山の精でもあるかのように思えた。庸三はきらきら銀沙の水に透けて見える波際に立っていた。広い浜に人影も差さなかった。
「僕の田舎の海よりも、ずっと綺麗で明るい。」
「そう。」
彼は彼女の拡げる袂のなかで、マッチを擦って煙草を吹かした。
「君泳げる?」
「海へ入ると父が喧しかったもんで……。」
「何だか入ってみたくなったな。」
庸三は裸になって、昔、郷里の海でしたように、不恰好な脛――腿にひたひた舐めつく浪のなかへだんだん入って行って、十間ばかり出たところで、泳いでみたが、さすがに鳥肌が立ったので、やがて温かい砂へあがって、日に当たった。新鮮な日光が、潮の珠の滑る白い肌に吸い込まれるようであった。
葉子は素直に伸びた白い脛を、浪に嬲らせては逃げ逃げしていた。
葉子が思いがけなく継母の手から取り戻した、長女の瑠美子をつれに、再び海岸の家へ帰って行ったのも、それから間もないことであった。彼女は十六時間もかかる古里と東京を、銀座へ出るのと異らぬ気軽さで往ったり来たりするのであった。この前東京へ帰ろうとする時彼女はいざ切符売場へ差しかかると、少しこじれ気味になって、瞬間ちょっと庸三をてこずらせたものだった。