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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

独りもののいつもぶつかるデレムマだが、同時にそれは当面の経済問題でもあった。何よりも彼は、葉子の苦しい立場に対する客観を欠いていた。

とにかく次ぎのA――市行きを待って、葉子も朗らかに乗りこんだ。そして東京行きの夜行を待つあいだ、タキシイでざっと町を見てまわった。風貌の秀でた藩公の銅像の立っている公園をも散歩した。

汽車に乗ってからも、庸三は滞在中の周囲の空気――自身の態度、何か気残りでもあるらしい葉子の素振りなどが気にかかった。町の写真師の撮影所で、記念写真を撮られたことも何か気持にしっくり来なかった。撮影所は美しい垣の多い静かな屋敷町にあったが、葉子はかつての結婚式に着たことのある、長い振袖に、金糸銀糸で鶴や松を縫い取った帯を締め、近いうち台湾にいる理学士のところへ嫁ぐことになっている妹も、同じような式服で、写場へ乗りこんだものだった。姉妹の左右に母と嫂とが並んで腰かけ、背の高い兄と低い庸三が後ろに立った。――庸三は二度とここへ来ることもないような気がした。

瑠美子をつれて葉子の乗っている汽車が着いた時、庸三は長男と一緒に歩廊に立っていた。

何といっても葉子にとって、彼の大きい子供は鬼門であったが、若い同志の文学論や音楽、映画の話では、二人は好い仲間であった。