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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

それからこんなものですけれど、もしよかったらこの部屋にお敷きになったらどうかと思って……。」

葉子はそう言って、持って来た敷物を敷いてみた。

「どうです、このネクタイ!」

縁側では、子供が葉子に買ってもらった、仏蘭西製の派手なネクタイを外光に透かして見ていた。

学校が休みになると、子供は挙って海へ行った。瑠美子も仲間に加わらせた。

読んだり書いたり、映画を見たりレコオドを聴いたり、晩は晩で通りの夜店を見に行ったり、時とすると上野辺まで散歩したり――しかしこの生活がいつまで続くかという不安もあって……続けば続く場合の不安もあって、庸三の心はとかく怯えがちであった。すべての人生劇にとっても、困難なのはいずれ大詰の一幕で、歴史への裁断のように見通しはつきにくいのであった。それに庸三は、すべての現象をとかく無限への延長に委かせがちであった。

八月の末に、葉子は瑠美子を海岸から呼び迎えて、一緒に田舎へ立って行った。母の手紙によって、瑠美子の妹も弟も、継母の手から取り戻せそうだということが解ったからであった。二人を上野駅に見送ってしまうと、庸三はその瞬間ちょっとほっとするのだったが、また旧の真空に復ったような気持で、侘しさが襲いかかって来た。