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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

たといついたにしても、病人が好い博士の診断を怖れるように、彼はできるだけその感情から逃避するよりほかなかった。結婚することもできないのに、始終風車のように廻っている葉子のような若い女性の心を、老年の、しかも生活条件の何もかもがよくないだらけの、庸三のような男が、永久に引き留めておける理由もないことは、運命的な彼の悩みであったが、また悽愴なこの恋愛がいつまで続くかを考えるたびに、彼は悲痛な感じに戦慄した。みるみる彼の短かい生命は刻まれて行くのだった。

お浚いが済んだ後で、その青年はじめ二三の淑女だちとともに、庸三と葉子も、軽い夜食の待遇を受けて、白いテイブル・クロオスのかかった食卓のまわりに坐って、才気ばしったお愛相の好い師匠を中心に、しばし雑談に時を移したが、その間も葉子は始終俛きがちな蒼白い顔に、深く思い悩むらしい風情を浮かべて、黙りとおしていた。それが病気のためだとしても、そんなことは前後に珍らしかった。

それと今一つは、手術場での思いがけない一つの光景が、葉子の、しかしそれはすべての女の本性を、彼の目にまざまざ見せてくれた。

庸三はその時担架に乗って、病室から搬び出されて行く葉子について、つい手術室の次ぎの室に入って行った。