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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁
庸三は原稿紙やコムパクトや何かの入った袱紗包みをもたせ、春雨のふる街を黒塗りの高下駄を穿いて、円タクの流している処まで、お八重に送らせて行った葉子の断髪にお六櫛を挿した仇な姿を、まざまざ目に浮かべながら、ちょっと見当もつきかねるのが、牴かしくも歯痒くもあったが、この少女をそれ以上苦しめることは無駄であった。葉子がこの侍女を絶対安全な乾分に仕立てあげるのは、何の雑作もないことであった。
子供とK――青年とが、夜更けの街へ何か食べに出てから、庸三は半病人のように病床に横たわった。そして軟らかいパンヤの蒲団のなかに独り体を埋めていると、疲れた頭脳も落ち着くのだし、衰えた神経の安めにもなるのであったが、彼にはこの醜陋な情痴の世界をこえて、もっと重要な不安があった。そうした場合、もしも創作意慾が旺んであり、ジャアナリズムの気受けがよかったら、彼の心意もそう沮喪しなくても済むはずであった。
庸三はいつごろまで仰向きになった目の上に「痴人の告白」を持ちこたえていたろうか、するうちに目蓋が重くなって電燈を薄闇くして睡った。
すると部屋が白々としたころになって、誰かが彼のベッドの端へ来て坐る膝の重さを感じてほっと目がさめたと思うと、面窶れのした葉子が上から彼を覗いていることに気がついた。