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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

いつも二階なので、階段を上がりざまに下へ目をやると、そこに見知りの女の顔が擽ったそうに笑っていた。庸三は笑みかえす余裕も失って、そのまま上がって行ったが、食堂はがらんとしていて、葉子もまだ来ていなかった。窓ぎわの食卓に就いて、煙草を一本ふかしたころに、やがて葉子が現われた。

「ごめんなさい、ちょっと、ハルミへ寄ったものだから。」

葉子はあの時のことを想い出しもしないふうだったが、いくらか気が置けるらしかった。庸三も気が弾まなかった。

「結婚はどうなったかしら。」

「家がいつ売れるか知れないんですもの。その間私たち黒須さんの家へお預けでしょう。」

葉子は苦笑していたが、そこへ青磁色したスウブが運ばれた。ナプキンを腕にした、脊の高い給仕が少し距離をおいて立っているので、話はそれきりになった。

「逗子の海ももうすっかりさびれてよ。もうあの人もやって来ませんから、先生お仕事をお持ちになってまたいらしてね。私の名誉恢復のためにも当分それが必要だとお思いにならない? 御飯たべたら活動でも見て、一緒に行って下さるわねえ。」

「行ってもいいけれど……。」

チキン・ソオテにフォクをつけながら、庸三は生返事をした。