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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁
それでなくとも、眩惑の底に流れているものは、いつも寂しい空虚感で、それを紛らすためには、絶えず違った環境が望ましかった。
「ちょっとホテルヘ行ってみない?」
葉子は誘った。
庸三はホテルのサルンへ顔出しするのも憚かられたが、ちょうど空腹も感じていたので、しばらくぶりで食堂へ入ってみたくもなった。ホテルではラジオも聞けたし、註文すればバスも用意してくれた。
恋愛事件前後、瑠美子は師匠のところへ還っていた。二人は内から門に錠をおろして、地続きの隣りの木戸から出た。そして砂地の道を横切ってだらだらした坂をのぼると、そこがホテルの玄関であった。ラジオは洋楽の演奏であった。庸三は震災前に、庸太郎によってやっと世界の偉大な音楽家の名や曲目を覚えはじめ、子供の時から聞き馴染んで来た義太夫や常磐津が、ビゼイやモツアルトと交替しかけていた時分だったが、この音楽ほど新旧の時代感覚を分明に仕切っているものはなかった。
食堂の開くのにはまだ少し間があった。庸三はサルンの片隅に椅子を取ったが、葉子も少し離れたところで、ラジオを聴いていた。彼女は何かしらトリオらしい室内楽の美しい旋律のなかから、自身の夢想を引き出そうとするように耳を聳てていたが、楽器の音を聴いていると、少し頭脳が安まるくらいの程度であった。