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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁
している彼の家庭の和やかなモダアン気分を庸三の前に発散させるのだったが、それだけにその交際も何のこだわりもないものだことは解っていた。庸三は葉子の思いつきで、小村夫婦と葉子と四人で、山王の料亭で晩飯を食べたことがあったが、帰りに誘われて、古くから上野辺に住んでいた小村には親の代から馴染の深い、広小路の寄席へ案内されたりした。このごろの葉子の交際が、この小村夫妻だけだとしたら、彼女の部屋へ、たまには庸三を案内しずにはいられないはずであった。それをしないところを見ると、例の用心ぶかい彼女の慣用手段として、庸三をまさかの時の突っかえ棒として連絡を保ちつつ、破綻に瀕した清川との恋愛を辛うじて繋ぎ止めているのに違いなかった。そしてそれでだんだん緩慢に庸三との交渉も絶えてしまうもののように見えた。
するとしばらく音沙汰のなかった葉子から、またしても電話がかかって来た。
庸三はどんな場合にも、手をひろげて彼女を待っているものとしか思えなかった。
「先生、私よ。今燕楽軒にいるのよ。ちょっと来て。すぐよ。」
彼女は命令するように言うのだったが、何か切迫した語調であった。