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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

小菊は親たちが微禄して、本所のさる裏町の長屋に逼塞していた時分、ようよう十二か三で、安房の那古に売られ、そこで下地ッ児として踊りや三味線を仕込まれ、それが彼女の生涯の運命を決定してしまった。

彼女の本所の家の隣に、あの辺の工場で事務を扱い、小楽に暮らしている小父さんがおったが、不断可愛がられていたので、暇乞いに行くと、何がしかの餞別を紙にひねってくれ、お披露目をしたら行ってやるから、葉書でもよこすようにとのことだったので、その通りすると、約束を反故にせず観音詣りかたがたやって来て、また何某かの小遣をくれて行った。彼女は東京でいっぱしの芸者になってからも、それを忘れることはなかった。

銀子は深川で世帯をもった時分、裁縫の稽古に通っている家で、一度この小父さんに逢い、銀子が同じ土地に棲んでいたというので、小菊のことをきかれた。しかし銀子がこの土地の、しかも同じ家へ来た時分には、小菊の亡くなった直後であった。

那古は那古観音で名が高く、霊岸島から船で来る東京人も多かった。洋画家や文学青年も入り込んだ。芸者は大抵東京の海沿いから渡ったもので、下町らしい気分があり、波の音かと思われる鼓や太鼓が浜風に伝わった。