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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

彼には何か、これだけの人、つまり軍勢を、味方にひきつける魅力か何かがあったには相違ない。

実兵力、五万以上は、確実にあった。

一番貝が海陸で鳴った。二番貝、三番貝と、すべて準備のあいずらしかった。

やがて卯ノ刻。

午前六時だった。

ど、ど、ど、ど……と尊氏のいる本船で激烈な陣太鼓の音がとどろき、串崎舟の一そうからは、のろしが揚がった。

わああっ、わああっ……と海陸あわせて鬨の声がおこったのは、いよいよ敵へ進撃となった武者ぶるいの刹那感にもよろうが、ひとつには尊氏の搭乗している旗艦のうえに、燦めくものを見たせいだった。

このとき

将軍のお座船には

錦のみ旗に日をゑがきて

天照大神

八幡大菩薩

と金文字に打ちたるを

高く掲げられ……

とは「梅松論」の記すところ。淡路の沖、瀬戸五十町ほどを、波間もみえぬほど、大小数千艘のふねが、一時に、ひがしの一方向へ白波を噛んでゆくさまは、古記録の誇張をしても、なお、およばないほどだったろう。

この水軍の先陣は、細川定禅を大将として、弟の帯刀先生、ほか四国諸党の、およそ五百余艘――

すべて舳艫を、敵の和田ノ岬から兵庫へ向けて、左方の陸地を望みながら、徐々に、接岸をさぐッて行く。