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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

そこらにかがまり迎えていたのは、みな彼の部下ともいえる海の男どもであろうか。ぎょろ、ぎょろと、見て通った。

この老人はよほど土着武士中でも重きをなしているものか。海士郡の村上家と共にいわば海賊衆なるものの豪家だった。領主にたいする反骨は、すでに持ち前なものである。――とまれ名和悪四郎や成田小三郎らの計には、早くからくみしていた者にちがいない。

黒木の御所を脱した帝は、山越えをとって、ひとまず、彼のやしきで憩いながら、なおあとの首尾や柵兵のうごきをみていた。――万一のばあいには、そのままその家の屋根裏へも――というほどな用意でもあったことだろう。しかしまもなく三名の妃もつつがなく落ちあい、殿軍の成田小三郎からも伝令で、

「われらは陸路をまわって、おあとより追っつきまいらせますれば、お舟にて早やかねての場所までお渡りを」

とあったので、

「いざ、今は」

と、老人の案内で、小迎の磯からここまで落ちのびてきたものだった。

しかしその成否と、ほんとの脱出は、これからなのだ。

港には、大型な帆船一隻と、軽快な速舟三ぞうも用意されてあったが、この先も、はたして無事をゆるすかどうか。