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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
「……?」
長年は、返辞もしなかった。
ただ穴のあくほど弟の顔を見まもってはいる。そしてつく息も忘れている。
弟とはいえ、ほんらいなら門を潜らせる弟ではない。義絶と世間へもいってあるのだ。なにしろ一族中での放埒者だ。
それを、亡父の行高は、盲愛していた。末子の甘やかし程度でなく。
「いまどきの若い者なら、悪とよばれるほどでなければ、行くすえ大をなすことも出来ん。大山の麓の寝牛みたいな凡児どもには、心配もないが愉しみもない」
と、言ったりしたので、この驕児はなおいい気になって悪四郎の悪名を自慢にしていた。
のみならず、あげくには長年の家臣末吉真吾という者の恋女房を奪って逐電してしまったのである。――以後、たまたま家人のうわさにでものぼれば「……悪四郎か。そうだなあ。たぶんは、よくて野伏りの頭にでもなっているか。さもなくば、散所民の中にでも落ちていることか」と、長年は淋しげにいつも笑い濁していたことだった。
「兄上。こう申しても、てまえの言では、なかなか、ご信用もございますまいな」
「いう通りだ。事にこそよる」
「ですが」
「まあ待て。おぬしはこれまでどこにいたのか」